歯周病
歯周病とは
歯周病とは、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患です。
歯肉が腫れたり、病態が進むと歯を支える土台である骨が減り、歯がグラグラして来ます。早期に治療することで完治することができ、ある一定まで進んでもきちんと治療すれば病状の進行を止めることができる治療感受性の高い病気と言えます。
よく耳にする"歯槽膿漏"も歯周病と違いはありません。歯槽膿漏は一般的に使われている言葉で、はっきりとした定義はありませんが、重度歯周病をさすことが多いようです。歯を支える骨である歯槽骨が溶けとけて、膿が漏れ出てくることを表しています。
健康な歯ぐきとは
・薄いピンク色の歯ぐき
・歯ぐきが引き締まっている
・適切な歯ブラシや歯間ブラシで出血しない
歯周病になる原因
歯周病になる原因は、お口の中の細菌(口腔内細菌)によって引き起こされる炎症性疾患です。
歯周病の多くは、プラークを日頃の歯磨きで落とすこと・定期的な歯科のメンテナンスで歯石を落とすことで予防することができます。ごく稀に、遺伝性の歯周病など予防が困難なものもあります。
歯周病の4つの症状レベル
1. 歯肉炎
歯肉炎とは歯周病の初期のものを指します。歯の周りに細菌の塊である歯垢(プラーク)がくっつき歯茎が赤く腫れた状態になったものを指します。
歯肉炎の段階できちんと治療を行うことで完治することができます。
2. 軽度歯周病
特徴
・赤色の歯ぐき
・歯の間の歯ぐきが丸みを帯びたり膨らんでいる
・適切な歯ブラシや歯間ブラシで出血することもある
治療内容
ブラッシングの指導
磨き残しやすい部分について説明し、ご自身で行っていただく日々のセルフケアの重要性をご理解いただくことが大切です。 付いている歯石を取り、セルフケアを行いやすくしたのち、状態によって3ヶ月ごとのメンテナンスに通っていただきます。
3. 中等度歯周病
特徴
・赤紫色の歯ぐき
・歯の間の歯ぐきが膨らんで腫れている
・適切な歯ブラシや歯間ブラシで出血し膿が出ることもある
・歯が少しぐらつく
・レントゲンを撮ると歯を支える骨が減り始めているのがわかる
治療内容
軽度歯周病と同様にブラッシングの指導を行いま磨き残しやすい部分について説明し、セルフケアの重要性を理解していただきます。歯ぐきより上についている歯石を除去し、歯ぐきの下についている歯石の除去(SRP)を行います。この時痛みが強いようであれば麻酔を使用します。
SRPで取りきれない場合は、小手術を行い深いところについている歯石を除去します。セルフケアの状態の確認を行い、1ヶ月ごとの定期検診を行う。その後、状態が良ければ3ヶ月ごとにメインテナンスの期間を延ばしていきます。
4. 重度歯周病
特徴
・赤紫色の歯ぐき
・歯ぐきが全体的に腫れていて、ブヨブヨしている
・歯ブラシを当てると出血し、膿も出る
・歯がだいぶぐらつく
・レントゲンを撮ると歯を支える骨がだいぶ減っている
治療内容
中度歯周病と同じ流れで治療を行なったのち、再評価を行います。治療を行なっても改善が見られず重度の場合は、ぐらつき具合から歯を抜くご提案をすることもあります。
歯周病が与える全身への影響
1. 歯周病と全身疾患の関係性
あらゆる全身疾患と歯周病の関連性が近年の研究により指摘され始めており、関連を挙げられているものには呼吸器系疾患、心疾患、糖尿病や妊娠などがあります。なかでも糖尿病との関連は深く、糖尿病は歯周病を悪化させる大きな原因のひとつでもあるのです。
その他にも、遺伝性の病気・血液の病気(白血病など)・皮膚の病気・降圧剤を含めた特定の薬によって歯肉を含めた歯の周囲組織に症状が出ることがあります。また、ホルモンの分泌の増減・糖尿病・喫煙などによって歯周病が治癒しにくくなるといった事があります。
重症の歯周病になり、口の中に歯周病を引き起こしている細菌が多くなると、血液や呼吸器内に入り込み、心筋梗塞・動脈硬化症・肺炎・早産などを引き起こしやすくします。
2. 歯周病と口臭の関係性
歯周病と口臭の間には高い相関性があることが知られています。
歯周病の特徴は歯周ポケット(歯と歯茎の境目の溝)ができることです。これは口の中の細菌の格好の住みかを提供します。細菌の中でも歯周ポケットの中の方に生息する嫌気性菌(空気が嫌いな菌)は、代謝の過程で硫化水素やメチルメルカプタンを産生します。これが口臭のもとになります。
歯周病を予防するには
歯科医院で行うこと
何度歯磨きの仕方を教わっても、しばらくすると自己流になりがちで、磨きやすいところ、磨きにくいところをご自分で判断するのは難しいと思われます。
歯周病は初期段階ではあまり自覚症状のない病気です。進行する前に定期的なチェックを受け、ご自分の磨き癖を確認するとともに、歯石が付いているのを除去し、セルフケアをしやすくすることが効率的な予防と言えます。
自宅で行うこと
歯科医院で指導されて磨き癖について留意しながらセルフケアを行なっていただきます。毎日キレイに歯を磨くことで、日頃の変化にも気付きやすくなります。
また食事の後しっかり磨くと、間食も減りダイエットにも効果があるかもしれません。
歯周病で抜歯をオススメする場合
1. 全身への影響が懸念される場合
重症な歯周病で改善が認められず、慢性的が細菌が大量に歯の周りで活動している場合、全身の健康への悪影響があることがわかっています。このような場合は早期に歯を抜くことをお勧めします。
2. 全体的に噛みづらくなる場合
重症な歯周病で、その歯が伸びて来たり噛むとグラグラすることでかみ合わせが難しくなる場合があります。そのような場合は、歯を抜くことをお勧めします
3. 歯を支える骨(歯槽骨)を失ってしまう場合
重度な歯周病で、その歯があることで歯を支える骨(歯槽骨)が溶けてしまい、その歯の周りの歯の寿命が短くなったり、その歯を抜いた後の治療の選択肢が狭まる時には歯を抜くことをお勧めします。
全て、その歯自体の寿命がきており延命が困難な場合に歯を抜くご提案をします。歯を抜く場合には十分に説明し同意を得てからの施術となります。